13cm
ぼくは13センチよりは大きいです!


好き好き大好き!
1998
ADV/ゲームA/精液B(顔2:口1)
キーワード:「壮絶」と言う言葉がエロゲの形容詞になるとは。

ボクのカワイイあの子。もう誰にも渡さない。ボクが彼女を守ってあげる。すてきなゴムの服着せて。「コミュニケーション不全のいかれフェチ男が、惚れた女を落とすのにその娘を誘拐してラバースーツで拘束・監禁」というゲーム。

エロゲというのはしばしば不自然なシチュエーション設定が行われます。同じ町内に美少女の同級生が大量に住んでいたり、自分の好きだったあの子も偶然自分に想いを寄せていたり、兄妹でも何でもない女が自分のことを「お兄ちゃ〜ん」と呼んだり。で、鬼畜系ではマッチョ系の状況が多いですな。「オレのチンコの前にひざまずけ」みたいなね。このゲームもある意味ではそういう女の子を制圧しようというゲームですわ(根本がちょっと違うけど)。しかしね、これは別格。これをやってしまうと世の中の鬼畜や精神倒錯系ゲームとか皆バカゲーに見えてくる。

イベント以外のCGはヒロインと街の風景とサブキャラの立ちグラのみ。ゲームを始めると、ラバーマスクをつけた監禁状態のヒロインと、主人公がいる。あとはひたすら部屋にこもって主人公の独白とヒロインの独白を聞き続けるだけ。音楽はギター1本。まさに「文章だけ見て下さい」というゲーム。なにしろヒロインの顔を一度も見ないエンドもあるんやから。何でしょう、このストイックさ。売れなくていいんでしょうか?

しかし、あえて超シンプルなヴィジュアルと音楽で勝負するだけあって、文章はすごかった。すごかった、としか言えない語彙のなさがもどかしいけど、本当にすごかった。主人公の愛憎と狂気、不安におののくヒロインの心の内が、もうとぐろを巻いてますわ。ファーストプレイでオレが最初に行き当たったのが主人公と誘拐した娘とがくっついてしまうと言うエンドで「なんじゃ、これ!結局ご都合主義かい!」と思ったが、これはコスモに浮かぶたった一つのオアシスに過ぎなかった。後はどのルートを選んでも、狂気・惨劇・死・愛憎・偏愛のちゃんこ鍋。うわわわわわわ〜。主人公の妄想シーンなんかは、バラバラになった身体と交わり、首だけになったヒロインに口射。執拗すぎてもう吐きそうです。

でも、誤解しないで。気持ち悪いということを言いたいんじゃないんですわ。要するに、文章の持つ力にぶちのめされてるんです。不安定な精神を書くのにありがちな心理学的なフォーマットに乗っ取った描写やEVAもどきのバカ演出に全く頼らず、ただただ2人の心の動きを描写するだけでここまでの世界を構築できるのは大した力技。

色々な意味で、この作品ほど徹底したゲームというのは類を見ない。よく「表現の強度」という言い方があるけど、これほどの圧倒的なレベルでの情念の発現は、もはや文学や映画(単館系)などハイ・カルチャーと呼ばれるジャンルのものを連想させる。これは傑作やね。

・・・但し、オレの好みではなかったが。こんなゲームでどうやって抜けゆ〜の。やっぱりオレは「全員狂人」よりは「全員バカ」のゲームの方が好きやね。

 

入院
1998
ADV/ゲームB+/精液B−(顔1:口1)
キーワード:ちんちんが「好き好き」より小さくなってたなあ

最低だぜ!大学の入学式前日に車にはねられて入院する羽目になっちまった!でも世の中捨てたもんじゃない。看護婦や入院患者、女の子はいっぱいいるよ〜。その13cmの次の作品は何と「ハートウォームな入院体験シミュレーション」。「飼」「好き好き大好き!」と来てハートウォーミング?どういう振り幅や、これ。でもこういう流れで出来た恋愛モノってのはHシーンがちゃんと描かれているだろうと踏んでトライ。

ん〜、普通。何か、すごいアブノーマルなブランドのイメージの先入観持ってやったんで、よけい普通に感じるわ。何かこじんまりしてるよなあ。グッとこないのよ。全体的に感情移入しにくいキャラクターやし、会話がフワフワと宙に浮いてるんでストーリーにもあんまりハートを鷲掴みにする力がないよ。なにより、コメディータッチの話やのに主人公が寒いのが一番アカン。やっぱり泣かせたり落ち込ませたりするのは簡単やけど、笑わせるのはムズいよな。ひとりで泣くのは簡単、ひとりで笑うのは難しい、オノヨーコ、みたいなね。音声がHシーンのみとか、BGMの数が少ないとかそういう部分でも「軽さ」っていうのを感じる。悪くはないけどねえええ。平凡。

唯一特徴的なのはCG原画。これは好き嫌い別れそう。まあ、みんな「口がでかい」ってのがキーポイントになるんやろうけど、オレは全然大丈夫や。むしろかわいいと思うけどね。それよりもっと問題なのは絵の描線。一様な太さでピグマで描いたみたいな線で、フェロモン出てない。これ、青年誌の線になってますけど。都会的に仕上がっておりますけど。こういうCGとテキストの軽さがあいまって妙な洒脱感があるんだよねえ、悪い意味で。

あと、汁気が・・・。「好き好き」はいい感じやったのに、「入院」は汁に関してはダメダメ。2段フィニッシュじゃないしなあ。さすがにHシーンのテキストはなかなかの濃口で良かったとは思うけど、絵的にそれを生かせているとは言えないねぇ。ただ、ボイスは喘ぐばっかりじゃなくってかなり具体的な描写を織り交ぜてくれるのでHどすえ。

あんまりいいこと言わなかったけど、まとまってるとは思う。テキストとかはなかなかいいと思うし、デザインはかわいいし、攻略の仕方とかも結構凝ってる。買って損はしないとは思う。まあ、得もせんかも知れんけど。かなり期待してやったからちょっと評価が辛くなっちゃった。でも、「好き好き大好き!」を作ったところにしては水準が低いと思った。ギャグは苦手か?

え〜、このレビューの最大のキーポイントは「汁ブランド」と思って買ったのに読み間違えた俺自身の釈然とせん気分、ということで。とばっちりを受けてしまったね。他の人ならもっといい評価すると思うよ。